**2004/06/08
[語り部]~
……やあ、あんたかい。~
なんだい、じっと見つめて。~
私の顔に何かついているかい？~
……まぁ、いいんだそんなことは。~
~
あんた、「モンスター」について~
どう思う？……何が言いたいのかって~
表情だね~
~
もちろん、モンスターにも色々いる。~
だが、通常にはこの世界にいる~
ヒトでないものを、便宜上まとめて~
モンスターと呼んでいるわけだ。~
~
だから、中には友好的なモンスター~
だっているし、悪魔のような……~
いや悪魔そのものも存在する。~
~
そうだな……~
例えば、あんた砂漠の蟻地獄は~
知ってるね？あそこは文字通り、~
蟻たちの世界さ。あれほど独特な~
世界は他には無い。~
~
女王とその子供達が、~
人間よりよっぽど完成され、~
統制のとれた社会を形成している。~
あんたら人間がモンスターと~
呼ぶ存在が。~
~
……ふふふ、難しい顔をしているね。~
いいんだ、別に優劣の話をしている~
わけじゃない。ただ、「モンスター」と~
「ヒト」の違いを知りたかったんだ。~
あんたは、なんて答えるかなと~
思ってさ。~
~
そういえば、ついこの間のことだが……~
その蟻の女王の様子が~
不可解だったという話を聞いたよ。~
~
いつも深部にいるはずなのに、~
冒険者達は上位階層で遭遇したそうだ。~
しかもその時の表情は~
怒りと悲しみに満ちていて、~
まるで何かを訴えかけるかの~
ようだったと。~
~
とにかく対峙した冒険者は、~
自身の恐怖よりも~
彼女に対する哀れみのような~
複雑な感情を抱いたそうだよ。~
~
なぁ、あんた。~
例えば……自分の家に~
モンスターが入ってきたとしよう。~
そして、突然理由もなく襲ってきた。~
当然、歓迎なんかできないだろう？~
~
では、モンスターにとっての人間は~
どんな存在なのかな？~
私はね、この世界の中で最も恐るべき~
モンスターは「ヒト」なんじゃないかと~
考えることがあるのさ。~
あんたはどう思う？~
~
--そう思うこともある~
そう……~
あんたはわかってるかもしれないが、~
他の存在を考える事は必要だよ。~
この世界の共存者であることに~
違いはないからね……。~
~
--それは……~
考えたこと無いって言うのかい？~
まぁ、当然かも知れないね。~
ただ、人間も一つの種族に~
すぎないんだろう？~
それならば、たまには違う視点で~
モノを考えてみるべきかもね。~
~
--そんな考えは滑稽だ~
……確かにそうかもしれない。~
こんな考え方をしていたらヒトは~
生きていけない可能性がある。~
でもね、この世界に~
ヒトしか居なくなったら~
一体どうなってしまうんだろうね……~
~
~
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